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Cute Movies

ボブフラナガンの生と死

監督:キルビー・ディック

ボブ・フラナガン ―――― 難病患者、アーティスト、そして・・・・・マゾヒスト。
一筋縄では行かない肩書き(?)を持った彼の日常とアート活動の日々を綴ったのがこのドキュメンタリー映画である。
一言で言って、この映画、よかった。本当によかった。

生れつき肺に水が溜まるという難病に犯され、幼い頃からずっと死や痛みと隣り合わせで生きてきたボブ。
そんな彼の中でいつからか決してノーマルとはいえない性癖が目覚めていく。
自分の体を痛めつけるマゾヒストという性癖。
女王様として痛めつけてくれる最愛のパートナー、シェリー・ローズとも巡り合い、マゾヒスト・ボブはまさに水を得た魚のよう。もう、やりたい放題である。
日本での公開にあたって一部カットはされたそうだが、
それでも映画の中には、びびらずにはいられないハードなSMプレーが目白押しであった。
 このボブ・フラナガンという人、おそらく40歳ぐらいだろうか。
いい年のおじさんにもかかわらず、実にチャーミングな人で、彼の手にかかると、不思議なことに手術やSMプレーで傷だらけになった体も、彼を冒す恐ろしい病気も、すべてユーモアと愛に溢れたなにかに変わってしまう。

例えば、彼が作ったアート作品―――彼自身のミニチュア人形。
口からは、病気のため出る肺膿。
お尻からはこれまた病気のため下痢気味のうんち。
そして男の人の大切な部分からは精液。
これらを、リンスだの絵の具だの使ってみちみち出して表現するのだ。

ほんと大人気ないというかなんというか・・・。
品がないと嫌う人もいるかもしれないが、これがなんだか可笑しくてとても憎めないのである。

「大人にはなれないだろう。」そう言われ続け彼は生きてきた。
幾度も繰り返された手術はその度に彼の体に新しい傷を増やした。
彼は結局、病気のために死んだ。
しかし、死と常に肩を並べて生きてきた男を撮ったこの映画に力強く映しだされていたのは、死よりもむしろ生であったように思う。
なによりも「意志的な生」。
スクリーンに映る彼はだれよりも「自分の意志で生きている」そういう感じがした。
キルビー・ディックという監督によって撮られたこのドキュメンタリー映画は、ボブやその家族を映し、そして、確かにそこにあった生を、愛を、映し出した。
どう生きるべきなのか、どう生きることが正しいのか、
人にとって何が幸せなことなのか、答えはわからない。
ただ、そこに映ったその真実に、何か心が震えずにはいられなかった。
観てよかったなと思う。
今年の夏のぴあフィルムフェスティバルで1回きり上映されたのをわたしは観たのだが、劇場公開は未定ということだった。
もっとたくさんの人が観られたらいいのに。
あの会場にいた人みんながそう言うと思う。

text by...  RS

2000/10/30